中小企業も育児・介護休業法が全面適用に
エピソード 10
わが社は、従業員100人未満の中小企業です。
育児・介護休業法の適用が猶予されていたはずですが、いつまでに就業規則などを整備すれば良いでしょうか?
黒猫社労士
平成24年7月1日より、適用が猶予されていた中小企業にも育児・介護休業法に基づく「育児短時間勤務制度」「育児のための所定労働時間の制限」「介護休暇」の導入について適用となりました。
今日は「育児短時間勤務制度」についてお話しましょう。
①短時間勤務制度とは
⑴ 3歳未満の子を養育していると希望すれば利用できる短時間勤務制度を設けなけ
ればならない
⑵ 現実は運用されているだけでなく就業規則等で規定されていることが必要
⑶ 短時間勤務制度は、1日の労働時間を原則として6時間(5時間45分から6時間まで)
とする措置を含まなければならない 。
この6時間が微妙な問題だったりします。
所定労働時間が7時間の会社は短時間勤務制度で5時間から6時間でよいわけではな
いと考えられています。
つまり法定8時間より短い労働時間の場合でも5時間45分から6時間にしてねということ
らしい。
②対象従業員は以下のいづれにも該当する男女従業員…男性社員もですよ
⑴ 3歳未満の子を養育していて短時間勤務をする期間に育児休業をしていない
⑵ 日々雇用される労働者でない
⑶ 1日の所定労働時間が6時間以下でない
⑷ 労使協定により適用除外とされた従業員でない 労使協定で適用除外とできる
従業員
ⅰ 雇用期間が1年未満
ⅱ 1週間の所定労働時間が2日以下
ⅲ 業務の性質等より短時間勤務制度が困難と認められる場合
ⅲの場合は代替措置が必要
A育児休業に関する制度に準ずる措置
C時差出勤制度
D保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与
またⅲについては指針があるようです。
注意すべきは有期雇用の労働者や時給契約のパートも適用除外にはできない
ということです。
10人以上の事業所は就業規則に規定し、労働基準監督署に提出が必要です。
エピソードと黒猫社労士は架空のお話です。
継続事業の一括 雇用保険について
エピソード 9
継続事業の一括の申請をして認可されました。
雇用保険の事務手続きも一括して本社で行うことができる場合があると聞きました 。
どうすれば良いですか?
黒猫社労士
原則として継続事業の一括をしても、労災が起こったときの給付の申請や雇用保険の被保険者の資格取得・喪失の手続きは被一括事業(営業所)を管轄する労働基準監督署やハローワークで行ないます。
ただし、雇用保険については被一括事業で事務手続きができる状態にない場合、本社で一括して行うことができます。
「雇用保険事業所非該当承認申請書」を営業所の所轄ハローワークに提出して承認を
受けます。
事務手続きをができる状態でないとは
雇用保険事務ができる事務員がいない・規模が小さいなど総合的にみて
判断されますが、営業所の人数が50人以上だと承認されない場合が多い
かと思います。
所轄ハローワークで確認しましょう。
労災保険には、このような扱いはないので原則どおり労災申請などの事務手続きは営業所を管轄する労働基準監督署で行ないます。
労災保険や雇用保険は保険料はわりと安いのですが給付の額が大きいです。
ですので、入っていない場合に労災事故が起きたときや従業員が退職するときにもめた時などのリスクが大きくなります。
人を雇う場合には忘れずに加入しましょう。
かなりアバウトですが、入る基準は下記のとおりです。
労災はアルバイトでも一人でも一日でも・・・です。
雇用保険は週20時間以上勤務で30日以上勤務見込の人・・・です。
会社経営の最初のリスク管理と言えます。
エピソードと黒猫社労士は架空のお話です。
営業所の労働保険を本社で一括
エピソード 8
本社と営業所がある会社です。
労働保険の申告や雇用保険の手続きを営業所では事務員が不慣れのため本社でまとめてすることは できますか?
黒猫社労士
労働保険は原則事業所単位または場所で成立します。
ただ条件がそろえば1箇所にまとめることができます。
その条件とは
① 継続事業であること
継続事業とは、事業の期間が予定されている建設の事業や 農林水産業等
以外の事業
② 指定事業と被一括事業の事業主が同一であること
指定事業は本社、被一括事業は 営業所と考えて下さい。
③ 同じ保険関係が成立していること
雇用保険のみが成立している営業所と労災保険と雇用保険が成立している本社
とは一括できない
④ 労災保険保険率表による事業の種類が同じこと
本社は製造のみ営業所は販売のみなどで事業の種類が違う場合は一括できない
⑤ 指定事業が被一括事業の従業員全部の勤怠や賃金の管理を行っていること
本社と営業所が別々に管理している場合は一括できない
「 継続事業一括認可・追加・取消申請書」を指定事業を管轄する労働基準監督署に
提出する。
提出したと同時に一括されるのではなく認可されてはじめて一括することができます。
一括の条件が整っていれば認可されます。
認可されると指定事業以外は労働関係が消滅するので、被一括事業については労働保険料の確定清算の手続きが必要です。
確定保険料の申告をし、労働保険料を納付します。
基本的には継続事業の一括は労働保険料の申告のためだけです。
労災申請や雇用保険の得喪などは一括されません。
労災保険の給付の事務や雇用保険の被保険者資格の得喪の事務は被一括事業の管轄
雇用保険については本社一括できる方法もあります。
別な機会にお話しましょう。
エピソードと黒猫社労士は架空のお話です。
複数の会社から給与をもらっている人
エピソード 7
二箇所の会社で籍があり役員報酬として給与をもらっています。
所得税や社会保険料はどういう徴収方法になるのでしょうか?
黒猫社労士
複数の会社から給与をもらっている場合は、代表取締役なのか取締役・監査役なのか従業員なのかなどで取扱いが少し違ってきます。
ここでは二箇所とも取締役としてお話します。
所得税
① 主たる給与か従たる給与かを選ぶ。
主たる給与とは「給与所得者扶養控除申告書」を提出している会社からもらう
給与
従たる給与とは、主たる給与を支払う会社以外の会社からもらう給与
② 主たる給与からの源泉徴収税額は、税額表の「甲欄」
「甲欄」は基礎控除や扶養控除を少しおりこんだ税額なので、毎月の
源泉 徴収税額が少ないです。
従たる給与からの源泉徴収税額は、税額表の「乙欄」
「従たる給与についての扶養控除申告書」を提出している場合は
若干の控除が認められている)
③ 従たる給与については年末調整ができないので、本人が確定申告をする 必要がある
社会保険
① 通常は加入条件(※)を満たしている会社で社会保険に入る。
所得税の主たる給与の会社で入るのが普通でしょう。
ただ、実態を説明すれば従たる給与の会社で入ることもできます。
※1日または1週間の所定労働時間が一般社員の3/4以上で1ヶ月の所定労働
日数が一般社員の3/4以上あること(原則)
② 二箇所ともに加入条件を満たしている場合は「二以上事業所勤務届」を提出する
加入条件を一方が満たせば他方は1/4となり両方は入れないはずですが
代表取締役や同族会社の役員などは二箇所とも常勤とみなされることが
多いです。
でも、実態が常勤でなければ主張することが大切です。
年金事務所に会社の実態を理解してもらいましょう!
③ 2社の報酬を合わせて社会保険料が決まる。
2社ともに資格取得届や算定を行い報酬月額の按分で社会保険料が徴収される。
2社で資格取得届を提出するが、もちろん健康保険証は1枚、ただ事務上以前の
保険証は回収され新しい保険証が発行される。
④ 2社の管轄や保険者が違っている場合は、保険者選択届で管轄年金事務所を選択
できる。
雇用保険
① 役員でも兼務役員で雇用保険に入っている場合を想定
② 各社の労働時間で判断し 2社の労働時間は合わせることはしない。
主たる賃金をもらっている会社で雇用保険に加入する。
所得税の主たる給与の会社でもなく、社会保険のように労働時間で
判断されるわけでもなく、主たる賃金とはもらっている給与の総額で
判断する。
【生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける一つの事業主のもとでのみ
被保険者となります】
(夜キャバクラでバイトしている人で昼の正社員の会社の給与がすごく少ない
場合、キャバクラの会社で雇用保険に入ることになる???
う~んどうなんだろう!
生計維持とは雇用の安定性も考慮されるのかな
キャバクラに安定性がないと言い切ることはできないけど・・・)
最近は複数の会社で働くことや、退社後にアルバイトや事業を行うことが 珍しいことではなくなりました。 法律は、働き方の変化についていけていません。
派遣問題をはじめとする非正規雇用問題も法律の想定能力に原因のひとつがあるのでは…
エピソードと黒猫社労士は架空のお話です。
社会保険に入るには
エピソード 6
起業しました。
年金事務所より新規適用事業所について通知が届きました。
どうすれば良いですか?
黒猫社労士
社会保険は、健康保険と厚生年金保険が原則セットとなっています。
でも、健康保険は健康保険組合に入り厚生年金保険は政府管掌に入るなんてことも可能です。
届出書類は送られてきた封筒に入っています。
自分から新規適用するときは、所轄の年金事務所で新規適用の書類一式くださいと言ってもらってきます。
健康保険の手引きも置いてますからもらってきましょう。
Webからダウンロードすることもできます。
届出書類 は下記のとおりです。
●健康保険・厚生年金保険 新規適用届
添付書類 会社謄本
●健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届
年金手帳で基礎年金番号を確認する
60歳以上で年金を受給している場合は年金証書も確認
●保険料口座振替申出書
社会保険料は口座振替になります。
提出する前に銀行で確認印を押してもらうことが必要です。
●健康保険 被扶養者(異動)届
添付書類 被扶養者の収入が確認できるもの
学生 在学証明書
学生以外 非課税証明書
年金受給者 年金振込通知書
●国民年金第3号被保険者資格取得届
健康保険被扶養者(異動)届が複写の場合は3枚目
配偶者が第3号にあたる場合は必ずこの書類が必要です。
配偶者本人の署名押印が必要な箇所がありますので注意しましょう。
●確認のために申請のときに持って行く書類
出勤簿 社会保険は所定労働時間や労働日数の概ね4分の3以上でないと入る
ことが できないので、その確認のためです。
賃金台帳 資格取得時の標準報酬月額の確認のためです。
社会保険の賃金には基本給の他に各種手当や通勤費も含まれます。
源泉所得税の納付書
給与からは源泉所得税をひいて支払ますが、会社はそのあずかった源泉
所得税を原則毎月納税します。(10人以下の会社は年2回の納付でもいい
という特例があります)
納付したときの収受印のあるものです。
会社の給与の総額や人数を確認するためです。
会社の概要がわかるもの
会社案内などです。 なければ口頭で説明すれば良いと思います。
確認書類がたくさんあるので、面倒です。
手順を考えて揃えてください。
エピソードと黒猫社労士は架空のお話です。